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Un journale de 1ercru 長崎県のフレンチ

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2012年 02月 21日

もし許される環境でしたら音楽を再生しながら読んで下さい。



 1ercruは今年で10周年を迎えます。
ひとからすれば別段大した事ではないかも知れませんが、少なくとも私自身には耐えがたい事や数えきれない程の沢山の試練や何にも代えられない喜びがありました。

大袈裟かと思いますが、例えるならば・・・今日まで這いつくばるような思いでしがみ付き手や足、心から血が出るような感覚に耐えながらもこの小さなお店を守る思いに精一杯、そして何とか今があるのだと実感しています。しかしそれはお客様の為にとか料理人としてとかでは無く単に自分の為になのかも知れません。

自身の体調を言い訳に時には我儘に、時には従順に運営してしまっているいい加減なお店では御座いますが数少ない大事な物を守りたいです。本当に自分勝手で失礼な奴だと自覚しています。

だから経営者として、料理人としてはまったくもって不合格な私だと思っています。

何の脈絡もなく感覚だけで運営してしまって。。ただ、御予約を頂いた時点から御来店当日まで一生懸命その方の為に料理し喜んでお帰り頂けるように頑張ります。その結果がこの小さなお店を維持できる唯一の答えだと知っていますから。自分にできる事はこの小さなお店を守る事しかできないと思っていましたから。

勿論今後もそれは変わらず気持ちが、足が前に出る限りは歩み続けたいと思っています。

私が歩みを止めない限り、それが動力となりファンが回り料理やお店全体の空気は常に循環され続けます。
新しい空気を皆様に送り続けたいと思っています。もう少し歩かせて下さい。歩かせて下さるのであれば。


今も神戸を離れ、長崎に流れ着いた日の事を鮮明に覚えています。

最後の夜は両親と食事をし、そのまま車に積めるだけの荷物と必要な着替えを積み込み山陽道を走りました。
途中は関門海峡を渡る手前で少し仮眠しただけ。はやる気持ちで長崎まで走りました。
数日前に連絡していた不動産屋さんと朝に落ちあい物件を回り最後に案内して頂いた物件に決め。
入居できる日まで小さなホテル住まい。

不思議となんにも怖くなかったです。どうにかなる。

私は阪神大震災を経験し極限だったからこそ現れる人の内面や行動を沢山見ました。
そんな中で人生をそれまでよりも多少考えるようになり短い人生で自分と見つめ合い、もっと自分の潜在意識に向き合いたいと言う感情が生まれました。



お店を持ったのも料理人としてとか、経営者としてどうにかなりたいって想いよりも、自分を確立したいと言う想いで。
今考えるとそんな想いでお店を持ったのだから、思考も行動も普通じゃなく周りの料理人の方や経営者の方々とイマイチ話も合わず村八分状態なのかもですね。


多分・・・普通だったらすんごく旨い料理を作る料理人になりたい、自分の腕だめしにお店を持ちたい、有名になりたい、いつかは自分の店を持ちたい、経営が成功して儲かりたい。
ま、いろいろ動機はあると思います。

前途のように私の場合は・・・生きて行く為に自分を確立したい。。何て漠然とした理由なんでしょ。。
そんな漠然とした理由でお店を持ったなんて今では信じられないくらいです。不純だったのかも知れません。

でも、その漠然とした目的は自分の頭の中や、自分の感覚を少しでも表現できる場を作り上げました。
その場を御来店下さるお客様と共有できる喜びは幸せだと感じております。

今までもこれからも飲食店をしている限り、食材の品質や料理の完成度を求めなくてはならないのは当然ですが、
私は技術も知識も経験も未熟で上手く伝える事が難しいです。でも今まで通りできる事を一生懸命やっていきたいと思っております。

10年ありがとうございました。皆様のお陰です。これからも応援宜しくお願いします。


4月のとある一日のみ10年を記念した日を設けたいと思っています。
今まで何も記念的な行事を行ってませんでしたのでやり方も何も分かっていません。
不備のある事ばかり目に付いてしまうかもしれません。
だから出来るだけいつものように御来店いただき、食事をしていただくだけ。
恐らく料理もいつもより少しだけ少なくなります。

私は皆様の食道、胃、膵臓、肝臓、腸・・・なんて感じで消化に関する臓器を動かします。
そこに私にはできない、皆様の心を動かす為の素敵なスパイスを調合します。

10周年には2カ月早いのですが、この日にしかできないおもてなしをさせて頂きたいと思います。

当日は残念ながら12名様しか御来店頂けません。ですので公平を期す為に予約開始日時は後日とさせて頂きたいと思います。

時間、料金等詳細が決定いたしましたらブログのみでのお知らせ後、御予約受付開始とさせて頂きます。

先日、打ち合わせの時にはこみ上げる物があり涙が止まりませんでした。

閉ざされた小さな空間で限られた1日だけの贅沢な日となります。
今までの10年のうちの僅かな時間を皆様と同じ時間に居れる事を楽しみに致しております。

深田伸治

by 1ercru | 2012-02-21 14:04


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